コラム
注文住宅の断熱性能を徹底解説/等級の違いや断熱材選び、費用対効果まで完全ガイド
2025.02.14

注文住宅を検討する際、断熱性能は快適な住環境を実現するうえで欠かせないポイントです。
本記事では、以下の内容をわかりやすく解説します。
- 断熱性能がもたらす健康、経済、環境へのメリット
- 「UA値」と「C値」などの指標の役割と理解のポイント
- 各種断熱材の特徴や選び方
- 外断熱と内断熱の違い、地域に応じた最適な選択
- 費用対効果や補助金活用術
本記事をご覧いただくことで、注文住宅における断熱性能の基礎知識と実践的な選び方を把握できます。ぜひ、理想の家づくりに役立ててください!
目次
注文住宅における断熱性能とは?

住宅の断熱性能は、快適な暮らしや光熱費の削減、地球環境への配慮において重要です。
断熱性能が高い住宅は、室内温度の安定を実現し、健康や経済面で大きなメリットをもたらします。
ここでは、断熱性能の基本概念と、その向上がもたらす健康面、経済面、環境面でのメリットについてわかりやすく解説します。
断熱性能を左右する指標:UA値とC値とは
断熱性能を示す指標には「UA値」と「C値」があり、これらを理解することが断熱住宅選びの第一歩です。
UA値(外皮平均熱貫流率)
UA値は、住宅全体の断熱性能を表す指標です。
この値が低いほど断熱性能が高く、冷暖房の効率が向上します。
例えば、北海道の寒冷地住宅では、UA値0.3以下が推奨されていて、高い断熱性能が必要とされています。
C値(気密性)
C値は住宅の気密性を示す指標で、隙間風やエアコンの冷暖房効率に直結します。
C値が小さいほど気密性が高く、エネルギー効率が向上します。
これにより、快適な住環境を維持しながら、光熱費を削減できます。
例えば、C値1.0以下の住宅では、冷暖房効率が15%以上改善されると言われています。
断熱等級とは?性能を測る基準と最新トレンド
断熱等級は住宅の断熱性能を数値化した基準で、現在「等級4」から「等級7」の4段階に分類されています。
等級が高いほど断熱性能が優れていて、光熱費の削減や住環境の快適さを実現できます。
等級ごとの特徴

・等級4: 2025年以降すべての新築住宅で義務化
・等級5: 光熱費削減効果が高い
・等級6: 寒冷地に適し、省エネ性能が高い
・等級7: 豪雪地帯など極寒地域向け ※等級7対応住宅には補助金が利用可能
断熱性能が低い注文住宅の3つのリスク

断熱性能が低い住宅では、さまざまなリスクが生じる可能性があります。
これらのリスクを回避し、快適で安全な住環境を実現するためには、住宅の断熱性能を高めることが重要です。
①健康リスク
断熱性能が低い住宅では、室温が十分に保たれず、健康への悪影響が懸念されます。
WHO(世界保健機関)によれば、健康的な室内温度は18℃以上とされています。
これを下回る環境に長時間さらされると、血圧の上昇やその他の体調不良を引き起こす可能性があります。
室内の温度は18℃以上に!
国土交通省の調査では、朝の居間の室温が18℃未満の住宅に住む人々が、18℃以上の住宅に住む人々に比べて、総コレステロール値や心電図異常が多いことが報告されています。
②経済的負担
断熱性能が低い住宅では、冷暖房効率が悪くなり、エネルギー消費量が増加します。
その結果、年間光熱費が他の住宅よりも20%~30%高くなることがあります。
③建材の劣化
結露が発生しやすく、建材の腐食やカビの原因となり、修繕費用が増加します。
適切な断熱対策を講じることで、建材の劣化を防ぎ、長期間快適な住まいを維持することが可能なのです。
注文住宅で採用される断熱材の種類と特徴

注文住宅では、以下の主要な断熱材が採用されます。
それぞれの特徴を理解し、地域や予算に応じて選びましょう。
グラスウール
グラスウールは、細かいガラス繊維で作られた断熱材で、コストパフォーマンスに優れていて、一般住宅で広く利用されています。
吸音性が高く、防音効果が期待できることが特徴です。
また、寒冷地から温暖地まで幅広い地域に適応可能です。
メリット | デメリット |
手頃な価格で導入しやすい | 施工時に適切な密閉処理が必要 |
吸音性が高く、静かな室内環境を実現できる | 湿気を吸収しやすいため、防湿対策が必要 |
不燃性が高く、安全性に優れている | 長期間の使用で性能が低下する可能性がある |
ロックウール
ロックウールは、溶融した岩石を繊維状に加工して作られる断熱材で、耐火性や防音性に優れています。
そのため、アパートや防音室などでの使用に適しています。
また、湿気やカビに強い特徴があります。
メリット | デメリット |
高い耐火性で火災リスクを軽減できる | グラスウールに比べてやや高価 |
吸音性が高く、防音性に優れている | 施工時に適切な防塵処理が必要 |
湿気やカビに強く、耐久性が高い | 重量があるため、施工に手間がかかる場合がある |
ウレタンフォーム
ウレタンフォームは、高い断熱性能と気密性が特徴の断熱材です。
液体を吹き付けるスプレー式や、パネル状に加工されたものがあり、特に複雑な形状や隙間の多い箇所でも優れた性能を発揮します。
メリット | デメリット |
高い断熱性能でエネルギー効率を向上させる | 他の断熱材に比べてコストが高い |
スプレー式は隙間なく施工でき、気密性を確保できる | 硬化後の修正が難しいため、施工技術が重要 |
湿気や結露のリスクを軽減できる | 紫外線による劣化があり、外部使用には保護が必要 |
注文住宅による外断熱と内断熱の違いとローコスト住宅での選び方

注文住宅において、快適な住環境を作るうえで重要な要素が断熱性能です。
その中心となるのが「外断熱」と「内断熱」の選択です。
それぞれ異なる特徴を持ち、建築コストやランニングコスト、住環境に与える影響が変わります。
ここでは、外断熱と内断熱の違いを詳しく解説し、特にローコスト住宅を考えている方への具体的なポイントを確認しましょう。
外断熱とは?
外断熱は、建物全体を外側から断熱材で包み込む方法です。
住宅を「断熱材のコート」で覆うようなイメージで、寒冷地や湿気の多い地域で特に効果を発揮します。
この工法は、建物の内部に温度変化の影響を与えにくく、快適な室内環境を保つだけでなく、建物の寿命を延ばす効果も期待できます。
さらに、結露が発生しにくいため、建材の劣化を防ぐことにもつながります。
外断熱のメリットとデメリット
メリット | デメリット |
室内の温度が一定に保たれ、四季を問わず快適 | 初期コストがやや高め |
結露が少なく、建材の腐食やカビのリスクが低い | 壁が厚くなるため、設計の自由度が制限される場合も |
構造体を外気から守るため、建物の寿命が延びる | 高度な施工技術が必要で、熟練した職人が不可欠 |
ローコスト住宅で外断熱を選ぶ際のポイント
ローコスト住宅において外断熱を採用する際には、以下の工夫を取り入れることで費用を抑えながら性能を確保できます。
ポイント | 具体的な内容 |
断熱材の選定 | 比較的安価で高性能な発泡ポリスチレンやフェノールフォームを選ぶと良い |
設計の工夫 | 壁の凹凸を減らし、シンプルな設計にすることで施工コストを削減できる |
地域特性に応じた選択 | 特に寒冷地では、外断熱の効果を最大限に引き出せる設計が重要 |
内断熱とは?
内断熱は、建物の壁や天井の内部に断熱材を配置する方法です。
施工が比較的簡単で、初期費用を抑えられるため、ローコスト住宅やリフォーム時に多く採用されています。
この工法は、壁の内部で断熱を行うため、設置がしやすく、リフォームにも適応しやすい点が特徴です。
ただし、外気温の影響を受けやすいため、湿気対策を徹底することが重要です。
内断熱のメリットとデメリット
メリット | デメリット |
初期コストが低く、施工が比較的簡単 | 外気の影響を受けやすく、結露のリスクが高い |
リフォーム時にも導入しやすい | 壁内部に湿気がたまりやすく、防湿対策が必要 |
材料費を抑えられ、施工期間が短くなる場合も | 断熱性能が外断熱に比べて低い |
ローコスト住宅で内断熱を選ぶ際のポイント
内断熱を選ぶ際には、湿気対策をしっかり行うことが重要です。
ポイント | 具体的な内容 |
防湿シートの活用 | 湿気が壁内に侵入するのを防ぐために、防湿シートをしっかりと施工する |
気密施工の徹底 | 隙間をなくすことで、結露や断熱効果の低下を防ぐ |
リフォーム対応 | 内断熱は既存住宅にも採用しやすいため、リフォームを視野に入れる際にもおすすめ |
注文住宅の断熱性能を高める実践方法

住宅の断熱性能を向上させることは、快適な暮らしを実現するうえで欠かせない要素です。
また、省エネや環境保護といった観点からも、断熱性能の向上は非常に効果的です。
快適な住環境の実現
断熱性能を高めることで、季節を問わず室温を一定に保つことが可能になります。
これにより、夏場には冷房費を削減し、冬場には暖房費を抑えられるため、家計負担が軽減されます。
また、急激な室温変化が少なくなることで、ヒートショックなどの健康リスクも軽減されます。
断熱改修を実施した住宅では、室内環境の快適性が向上し、夏と冬の室温差が平均で5℃以上軽減されたというデータもあります。 このような住環境の改善は、家族全員が安心して暮らせる空間づくりに直結するのです。 |
光熱費の削減と経済的効果
高い断熱性能を持つ住宅は、冷暖房効率が向上し、光熱費の節約につながります。
例えば、断熱等級4の住宅に比べ、等級7の住宅では年間で約30%の光熱費削減が可能です。
環境への配慮
断熱住宅は、エネルギー消費量を削減することで、CO2排出量を大幅に抑える効果があります。
これは地球温暖化防止にも寄与し、エコ住宅としての価値を高める要因です。
注文住宅における断熱の注意点と課題

断熱性能を向上させるためには、地域の気候や住環境に合わせた設計や施工が欠かせません。
ここでは、断熱材の選定や施工時のよくある注意点、断熱強化に伴う課題についてみてみましょう。
注意点1: 地域ごとの特性に応じた断熱設計
気候条件は地域によって異なるため、寒冷地では厚みのある断熱材や防湿対策が必須です。
一方、温暖地では断熱性だけでなく通気性の確保が重要となります。
地域特性を考慮した断熱設計を行うことで、住まいの快適性が向上するのです。
注意点2: コストと効果のバランスを考慮する
断熱材や施工方法によっては初期費用が高額になる場合があります。
しかし、長期的な視点で見ると、光熱費の削減や住環境の快適性がその投資を上回るケースが多いです。
たとえば、予算内で効率的な選択をするためには、費用対効果をしっかり比較することが重要です。
注意点3: 適切な施工技術の重要性
断熱性能は、正しい施工技術によって大きく左右されます。
不適切な施工では、結露の発生や断熱性能の低下につながるリスクがあります。
信頼できる施工会社を選び、適切な施工技術を確保することが必要です。
断熱性能を強化するためには、これらの課題を理解し、事前に十分な準備をすることが欠かせません。 快適で長持ちする住まいを実現するために、注意点を踏まえた家づくりを心がけましょう。 |
注文住宅で断熱性能を高める実践的な方法

断熱性能を向上させることは、快適な住環境を作り、光熱費削減や環境負荷の低減につながります。
ここでは、具体的な方法をわかりやすく解説し、実践しやすいアイデアをお伝えします。
1.窓やドアの断熱性向上
窓やドアは、室内外の熱交換が最も発生しやすい部分です。
断熱性を高めることは、光熱費削減と快適な室内環境の両方に効果的です。
複層ガラスやLow-Eガラスの採用
複層ガラスやLow-Eガラスを使用することで、断熱性能が向上します。
これにより、室内の熱を効率的に保ち、冷暖房費を削減できます。
・費用感:窓一枚あたり数万円の投資が必要ですが、長期的な節約効果が期待できる ・補助金の活用:各自治体や国の補助金制度を利用することで、導入コストを軽減できる |
樹脂製や木製のサッシ
サッシを金属製から樹脂製や木製に変更することで、熱伝導率を下げ、室内の冷暖房効率を高められます。
・効果:冬の冷気の侵入や夏の熱の入り込みを抑制できる ・注意点:木製サッシは湿気対策が必要な場合がある |
日射対策
夏場の過剰な熱を防ぐために、窓ガラスや周辺設備で日射を遮断する工夫が有効です。
・Low-Eガラス:日射熱を遮断しながら、室内の快適な温度を維持 ・軒や庇の設置:国土交通省の提案に基づき、日射角度を考慮した設計を採用 ・外付けブラインドやシェード:簡単に設置でき、すぐに効果が期待できる |
DIYでの断熱向上
手軽に導入できるDIY方法は、費用を抑えながら効果を実感できる点で非常に魅力的です。
ウィンドウフィルムの貼り付け
断熱用フィルムを窓に貼ることで、窓からの熱損失を抑える効果が得られます。
費用感:1枚あたり数千円程度で購入可能 効果:夏の熱気を抑え、冬の室温を保つ効果あり 施工:簡単な手順で、初心者でも取り組みやすい |
隙間テープの活用
窓やドアの隙間を埋めることで、冷暖房効率を向上させる方法です。
効果:隙間風を防ぎ、室内の快適性を高める 施工:自己粘着タイプのテープを使用すると簡単に施工可能 |
カーテンや遮熱カーテンの活用
断熱性能を高めるためには、カーテンの選び方にも工夫が必要です。
厚手のカーテン:窓からの冷気を遮断する簡単な方法として有効 遮熱カーテン:夏は熱を遮断し、冬は熱を逃がさない効果を発揮 |
参考元:国土交通省「断熱性能を上げるためにできること」
断熱性能を高めた注文住宅の成功事例

断熱性能が向上した住宅は、快適な住環境を実現しつつ光熱費の削減や健康リスクの低減といった多くの利点をもたらします。
ここでは、具体的な事例をもとに、その効果をわかりやすく解説します。
北海道における高断熱注文住宅の事例

北海道の厳しい寒冷地では、住宅の断熱性能が生活の快適さを左右します。
以下は具体的な事例です。
- 断熱性能(UA値):0.28以下を達成
UA値が低いほど断熱性能が高く、この住宅では最高水準の断熱性能を実現しました。 - 結果:冬季の暖房費を年間60%削減
光熱費削減により、家計への負担を大幅に軽減しました。 - 採用した断熱材:グラスウール240mm厚
厚みのある高性能断熱材で、住宅全体をしっかりと保温します。 - 特徴:トリプルガラス窓を採用
窓からの熱損失を最小限に抑え、室内の暖かさを長時間保ちます。
この住宅では、寒冷地特有の厳しい冬の気候にもかかわらず、快適で効率的な住環境を実現しました。
東北地方の省エネルギー注文住宅の事例

東北地方は寒冷地ほどではないものの、冬場の寒さが厳しい地域です。
この事例では、断熱性能を向上させた設計が効果を発揮しました。
- 基準:HEAT20 G2基準に準拠
省エネルギー性能を高めるための基準を満たしています。 - 設計の工夫:南向きの窓配置
日射熱を効率的に取り入れる設計で、冬季の室温を快適に保つ工夫を施しました。 - メリット:冬季のヒートショックリスクを大幅に低減
室温を一定に保つことで、住民の健康リスクを軽減しました。
この住宅は、住環境の快適さだけでなく、健康面でのメリットも実現した好例といえます。
注文住宅の断熱性能のまとめ
断熱性能を高めることで、快適な住環境、光熱費の削減、健康リスクの低減、環境負荷の軽減といった多くのメリットが得られます。
外断熱と内断熱、それぞれの特徴を理解し、地域の気候やライフスタイルに適した断熱方法を選ぶことが重要です。
断熱性能を考慮した注文住宅は、長期的に見て経済的で、快適な暮らしを支える大切な選択となるでしょう。